1 拘(こだわ)る



 大都市横浜のセントラルターミナル「横浜駅」。あらゆる箇所で老朽化が進み、継ぎ接ぎで改良工事が行われている。お世辞にも綺麗とは言えないその駅で、私はある「ヒト」を待っていた。

 『坊主頭にジーパン、緑色のTシャツを着てます』

 メールの遣り取りで、絵文字や顔文字を一切使わない点が、私と似ていた。
 パソコンでやり取りをするメールの文章がとても長い点も。

 まだ会った事のないその人を、待ち合わせ場所の周囲をぐるりと回って探した。
 視界に入ったその人は、メールに書かれていた通りの格好で、エスカレーターを背にして立っていた。色が白く、線の細い、整った顔立ちの男性だった。同時に彼はこちらに気づいた。
 「サトルさん、ですか?」
 「ミキさん?」
 「どうもどうも」
 「こちらこそ、どうもどうも」


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